藤ほの香Blog 星叶-ほのか-な願い

産経新聞「朝の詩」などに投稿しています。

未来―産経新聞「朝の詩」

産経新聞朝の詩「未来」

産経新聞 朝の詩「未来」


産経新聞の朝の詩に掲載していただいた詩。

2017年1月27日、20歳を迎える直前の冬でした。

 

原風景は中学3年生の冬。

スキー合宿に行くために始発の電車を待っていたとき。

見かけた老夫婦は長年連れ添ってきたことがよく伝わってくるくらいに、表情がよく似ていました。

手を繋いで身を寄せあっている二人の前に電車が滑り込んできたときが、ちょうど夜明けでした。

朝日に照らされる二人は、誤解を恐れずに言うならば、そのまま天国へ昇っていってしまいそうな神々しさでした。

5年以上経った今でも、印象に残っている光景です。

 

実は、当時の私は思春期真っ只中でした。

「オシャレ」「可愛い」「すごいね」

そんな褒め言葉が何よりのご馳走で、誰かに羨ましがられることが幸せ。

同年代だけの狭い世界―40人くらいのクラスの中で、友達はいるけれど、本当はどう思われているのかわからない。

だから、自分の絶対的な存在意義を探していました。

そして、何かしらで褒められたとき、認められたと思ったときに、充足感を感じていました。

 

けれど。

スピーチでクラスメイトの尊敬を集めたときより、全校集会で表彰されたときより、老夫婦の姿を見たときの方が、何故だか嬉しかったのを覚えています。

現に今も、表彰して下さった校長先生の表情は覚えていないのに、名前も知らない二人の表情は覚えているのです。

 

血も繋がっていないのに、雰囲気がきょうだいのように似てくるほど、自然体で長く共に生きられる相手。
そんな相手と一人でも巡り会えたなら、それ以上の幸せはない。

そう、この日から思っています。

 

夫婦の理想形は人それぞれだと思いますが、私にとっては年老いた二人の姿が一番の理想です。

 

***

未来


早朝の

プラットホームに

老夫婦が佇んでいる

肩を寄せ、手を繋ぎ

少し丸い背中も似て


滑り込む電車の向こう

朝日がふたりを照らす


ああ私も

いつの日か

彼等の行き先に

辿り着けるでしょうか

***

産経新聞朝の詩「未来」

産経新聞 朝の詩「未来」

選んで下さった選者の新川和江先生、投稿のきっかけを下さった故・柴田トヨさん、ありがとうございました。